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RENT 卒業!


2/26
  今日ミュージカルRENTのオーディションに行ってきました。オーディションといってもまだ2次です、きっと全国から何千人の人が応募したでしょう。一次の書類とテープ審査。そこで落ちると思っていたので受かったときは喜びましたが、まだきっと500人くらいは候補がいますので、おそらく今回で落ちるだろうと思っています。落ちたくはないけど。
 1月13日にこのオーディションがある事を知り、16日締切で、必死に慣れないMDに唄を録音した。ぎりぎりまで悩みましたが、こういう機会があるのに、知らないまま通りすぎたのではなく、応募したことを記憶に留めようと思っていたのです。唄ってみると何しろ唄が酷かったし、僕は45歳だし、演技経験は浅いし。これ、酷いなとは思ったけれど、まあええいいいや!って思って投函した。数日たった。もう応募した事も忘れていた頃でした。東宝の演劇部ですって電話があり、2次試験の楽譜が送られて来たのです。それが1月の末、あの名曲「シーズンオブラブ」でした。初めてこのミュージカルを見たときを思い出した。いい曲だなって思ったことをです。何度もこの舞台をみたことも思い出した。
 ピアノで音を取りながら唄ってみると大好きな芝居の大好きな曲だったから、1メロは何とか分かっていても、コーラス、旋律、裏拍子、シンコペーションなどいろんな地雷が仕掛けられている難曲だと分かったんです。試験は2月の末。期間は1か月。
 日本で一番高いレベルで、いやアジアで、世界でも最も高いレベルでミュージカルをやっている人たちの前で唄うのに、はい、唄えませんでした!ってなるのがいやだった。誤魔化したくなかった。せっかく一次を通してくれた東宝に失礼だし、一次で落ちた人にも失礼だし、何よりもこの唄をきちんと唄いたいと思ったのです。
 そこで、唄を習う事にした。前からやりたかったので、とてもいいきっかけになりました。オーディションは今回でダメでしょうが、やるなら一流の人のところで習う。これが僕の人生の鉄則です。
 知り合いに相談して紹介してくださったのが、泉先生でした。さまざまなミュージカルの歌唱指導で有名な第一人者。何しろキラ星のような名前の人たちがお弟子さん。その先生。ご本人も二期会の会員でミラノで声楽を学んだ人でもある。この先生と出会えたのが今回の財産となりました。
 おそるおそる尋ねたのが、2月の初め、それから5日に1回くらいの割で、特訓してもらいました。肉体訓練、発声、そして、楽曲。僕の唄ったのは、オリバーとか、わんわん物語とか、レミゼとかの好きな曲です。先生は好きな歌、歌いたい歌をもってくるように言ってくれるので、2週間程前に、おそるおそるシーズンオブラブを持って行った。そしたら、懸命に教えてくれた。
 こうして唄う事を1ヶ月、真剣に取り組みました。稽古しました。とても難しく、トラップだらけの曲ですが、自分ができることは全部しました。全身全霊をかけた。何しろ電車の中でも、バスの中でも、新幹線の中でも、唄っていましたから。洗濯物を干す時、道を歩く時。もちろん唄います。そして、あ。リズムが違う。ここは、こうリズムに乗って唄うんだった。ここにアクセント。発声がここでダメになるところだ。先生の教え方が上手いのでドンドン上手くなりました.途中から、何かこう唄った方が味が出るみたいなことまで教えてくれて、いわゆる演技指導から演出に変わった感じがして本当に楽しかった。
 若い頃と違って感情に任せて唄うのが好きでなくなりました。割と淡々と唄うのが好きなんです。いい音楽は音楽そのものが全てを語ってくれる。だから表現者は余計な事をしないほうがいいと思うんです。それに、この唄はどう唄っても唄う本人の人生をきちんと映し出してしまうから。
 今日も仕事があったのですが、午後からは泉先生のところにいってもう一度レッスンを受けました。先生は最後はもの凄かったです。もう唄うなみたいなことを言うんですよ。佐藤さんは一生懸命唄うと重たくなってしまってこの曲の良さがでないから、軽く、さらって唄った方がいいよ。そんなことを言われました.僕も本当に正しいことを言う人だなあと思いました。一生懸命軽く唄った。それが、4時30分くらいに終わって、家に帰って逃げ出したくなるものいやだし、この曲にこれほど打ち込むのは、今日が最後だろうから、何かこの曲ともう少し寄り添っていたいと思ったんです。外苑前の先生のお宅から、新宿3丁目で降りて、銀行や郵便局で用事を済ませたあとは、ぶらぶらと会場に向かった。シーズンオブラブを、迷惑にならない程度の大きさで唄いながら。
 そしたらさ、何か涙が出てくるわけです。歩いている人全てが、老いも若きも日本人も外国人も、空も冬の寒さもなんかみんな愛おしく思えてしまったんです。525600分 1年の瞬間、分数はどう数えればいいのだろう。全ての人の人生を積極的に肯定し、一瞬を大切に思い人を愛して行く事の大切さを唄った素晴らしい曲です。オーディションを受ける事で僕はこの曲に真剣に向き合い、取り組む事ができて、本当に幸せだったんです。泉先生という素晴らしい出会いもあった。また、唄う事音楽に取り組む事が楽しくなってきた。
 いつの間にか楽譜はボロボロになりました。一年前に和田憲明さんのところで芝居の勉強をしていたときの台本と同じ感じです。すり切れちゃうんだよなあ。そして、泉先生から教わった諸々のこと。いっぱい書き込んだ。何週間か前に、まっさらで送られて来た楽譜はボロボロ。いつも一緒にいたからなあ。ベットの中で唄っていつの間にか眠り、起きたら僕のケツの下だったなんてこともあったなあ。でも何百回、何千回と唄ってもいい唄なんです。
 僕は、他に試験を受ける人ってどんな人たちなんだろうと思って、きっと僕と同じように練習をして来る人ってどんな人たちなんだろうと思って、オーディション会場である新宿の芸能花伝舎に、予定の2時間半前に着いちゃったんだよね。
 前の25名の試験だった人が戻って来た。そしたら、僕の知ってる女優さん、この人はレミゼラブルにも、ジギルとハイドにも出ているベテランさんが、僕を見つけてくれて。佐藤さん、え、受けるんだ!芝居頑張ってるね。いい!いい!って言ってくれました。何かさ、嬉しいな。東宝の受付の人もスゴく感じが良かった。そして、皆が帰ってしばらく稽古していたら、音楽監督さんが入って来てくれて、もし良かったらいま試験してもいいですよ!って言ってくれた。あと2時間、この名曲と寄り添いたいなとも思ったけれど、こういうのは流れなので、すぐにオーディションを受けさせてもらった。だだっ広い会場に僕一人。でもね、ちっとも上がらなかった。それは東宝の審査する方たちがみんな暖かいからです。
 では初めて下さい。この3週間、千回は聞いたあのメロディ、前奏が流れた。僕は唄いました。もちろん、泉先生のところでできたことが全部で来たわけではなかった。オーディション。初めての唄のオーディション。初めての東宝演劇部でのオーディション。へなちょこな力しか土台ないけど、それさえも100%何か出せません。でも、オーディションってそういうものだから。仕方ないっす。だけど、3週間前と比べたら格段の進歩。逃げずにこの曲と付き合った1ヶ月が終わった。
 そしたら、唄い終わったら、審査員の方たち全員が拍手してくれたんです。スゴく稽古してくれたんですね。ありがとう。音楽監督さんがそう言って下さった。
 唄い終わって足が震えている自分に初めて気がついた。そんな優しい言葉に僕はまともに言葉も返せず、何かヘンテコにおどけて会場を逃げ出してしまいました。バカだな俺。人間関係ホント作るの下手。
 日本で一番高いレベルのミュージカルを作る人たちです。もちろん厳しく自らを律し高みを目指す人たちです。超一流です。でも、この瞬間、僕はいつかこの人たちと仕事をしたいと強く思いました。何かを生み出す現場で、一緒に作れる現場を共有したいと思いました。こうして僕はレントを卒業した。したくないけどさ。そりゃ落ちるよ。
 次の泉先生のレッスンは3月7日。僕はもう一度、「シーズンオブラブ」を見てもらおうか、レミゼラブルの大好きな「この宿の主人」を見てもらおうか考えています。
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佐藤治彦 Haruhiko SATO

Author:佐藤治彦 Haruhiko SATO

さとうはるひこ Haruhiko SATO
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